湘南の森に多量発生した稚樹(実生)について |
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2016年10月調査結果 2017年11月調査結果 2021年11月調査結果 |
湘南の森に多量発生した稚樹(実生)について
2016年10月30日 市民団体 湘南の森 湘南平浅間山(180.9m)の東に続く海抜約150mのなだらかな稜線上のこの地は落葉樹のケヤキ、 ヤマザクラ、イヌシデ、ハリギリ、クマノミズキ、等そして常緑樹のタブノキなどの高木・ 亜高木(樹高10から20m前後)が生育している。 その一角(45×3〜7m・約249u)にヒガンバナが栽植されていたが、 次第に手入れがされず、6〜7年前から稚樹(実生)が生育を始めた。 今回その稚樹(実生)の種類と数を調査し、合わせて近くの母樹になるであろう成木の分布を調査し、 今後この地域の林地の管理の参考としたい。 調査員 湘南の森会員 調査時期 落葉樹でも樹種の判別しやすい2016年8月〜10月 調査方法 調査区を18区に分割し、事前に樹種の判別方法を学び、全ての樹木(稚樹)の種類と数を調べた。調査にはダブリや落としがないようカウントした木には毛糸などでマーキングした。また周囲の高木の位置と胸高直径を計測した。 調査地・区取り 湘南平浅間山(180.9m)の海抜約150m地点45×3〜7m、249uで 南面はタブノキなどの照葉樹林に囲まれ、北面は里山として利用され、今ではイヌシデ、ケヤキ、コナラ、クヌギなどからなる二次林を形成している、東西に長く、ヒガンバナが栽植されていた跡地である。 図1にあるように調査地をほぼ南北に、そしてほぼ東西に9分割した。1区画の面積は6.8〜23.1uである(図1)。 今回調査区内に発生が見られたが、次の種は対象から外した。 アオキ、クサイチゴ、つる植物のサネカズラ、アケビ類、キヅタ。 結果 樹種ごとの各区の本数は表1に示したように総本数1588本で、面積当たり6.4本である。樹種は27種であった。 各区の樹種(ケヤキ・クマノミズキ・イヌシデ・エノキ・タブノキ・ムクノキ)の分布状況は図2・図3・図4・図5・図6・図7に示した。 そのほかにヤマグワ・カラスザンショウ・ハリギリ・コナラ・モミジ類・アカメガシワ・マユミ・ムラサキシキブ・ヤブニッケイ・カゴノキ・ハゼ・コクサギ・オニシバリ・サンショウ・モクレイシ・クヌギ・ミズキ・マンリョウ・イヌビワ・ヤツデ・キブシが少数ではあったが見られた。 樹種ごと考察 ケヤキ 近くに母樹と思われるのは2本であるが、調査区域で全樹種の40.4%もある。 種子は風で運ばれるので離れた所から運ばれたとみられる。日当たりのよいN3〜N6及びS3〜S6区に多い。 クマノミズキ 鳥による散布は鳥類の体内滞留時間は哺乳類と比べるとはるかに短時間で普通数分から数十分程度であるといわれている。母樹と分布状況をみると納得できる。 イヌシデ 母樹が風で運ばれる種である。母樹がこの一帯に多く、母樹の近くにも多いが西側に多い。 タブノキ 調査区で常緑樹として多い。陰樹からだろうかクマノミズキ等で覆われた下によく見られ、樹齢は1〜2年生と思われるものが多い。母樹の樹下に多い。 エノキ これも鳥により運ばれる種である。調査区全体に分布している。 ムクノキ これも鳥により運ばれる種であるが、エノキとは分布が多少違い西側にはない。 その他 湘南平一体に自生する主な種が小さな調査区内ではあるがコナラ・カラスザンショウ・ハリギリ等の落葉樹とモクレイシ・カゴノキ・ヤブニッケイ等の常緑樹が見られた。 樹の種類と発生本数 調査各区の樹の種類と発生本数の関係を見ると図8のようになり、発生本数の多い地区は樹の種類も多く、日照、アレロパシーなどの影響を受けているものと思われる。 総合考察 今回調査は稚樹(実生)発生であり、これは種子の散布と種子の発芽、その後の生育の結果である。 今回の調査区はヒガンバナ跡地で一・多年生又笹やアオキも少なく背の高い樹木も無い開けた地区であり、湘南平としては特殊な環境であるが、他の地区もこのような条件がそろえば多くの実生の発生が期待できる。 土壌シードバンク(埋土種子)の調査は実施されていないが、実生発生には当然含まれているものと思われる。 当然ではあるが近くの母樹や又湘南平の植生を反映している。密度は高く、極めて小さい稚樹(実生)でありこのまま放置すると自然淘汰されるであろう。 尚先に「湘南の森」として高木調査した中でイヌシデ、コナラ、タブノキ、ケヤキ、ハリギリの稚樹が確認できた。ヤマザクラは今回の調査対象区では発生が見られなかった。 この地区の将来の林層を想定して間伐など間引きが必要と思われる。 又ケヤキなど密度の高い樹種は掘り起こして他地区への苗木供給も考えられる。 市民団体 湘南の森 田中文一 .
2017年11月10日
先の調査から1年後の11月10日に各区の樹高5樹について樹種と樹高を調査した。その後の管理1 (表1) その結果全体を通してクマノミズキが圧倒的に多く大きなものは樹高272cmにも生育し、 他の樹種は樹下に隠れ枯死するものもあった。このままではクマノミズキだけの林になる可能性があり、 2018年冬に区全体を東西2区に分割し東区は残したい樹を選定し、他は除伐を行った。 西の区はそのまま手つかずとして、今後の生育を見守りたい。 2022年2月20日
1.経過その後の管理2 湘南平浅間山の東側の一角(当会で東山エリアと呼ぶ活動エリア内)にヒガンバナ が植栽されていましたが、次第に手入れがされなくなり近くの母樹から稚樹(実生) が生育し始めました。 そこで、2016年8月から10月にかけて、このエリアを調査対象区として18 区に分割し、生育している全ての樹木(稚樹)の種類と数を調べました。 (図1−ヒガンバナ跡地調査エリアの区割を参照) 2.今回調査の概況 @期間 2021年10〜11月 A調査方法 前回と同様の区割りで、樹種と本数、並びに、今回は樹高を調査した B調査結果 表1 ヒガンバナ跡地調査結果を参照 C結果概況 「図2 調査時点の概況」を参照 前回調査から5年経過する中で、 a)今年度の総会議案書にも記載してありますが、2016年の調査時点から東側は 西側と比べて樹木数が少なかったため、2018年に東側の「S7〜S9」と 「N7〜N9」区画は、数本残して間引き処理を行いました。 その後、実生も増えましたが、2021年度に、ナラガレ病にコナラを伐採後、 燻蒸のために玉切した樹木を移動させる途中、作業員によって踏み荒らされたよ うでクマノミズキを除き、ほとんど生育できていません。 b)「S4〜S6」の区画は、、伐採・燻蒸される前のコナラの母樹から実生が生育 しており、実生保護のため周辺の樹木を除去しており、コナラの稚樹主体になっ ています。 c)「S1〜S3」と「N1〜N6」の区画については、下草やハイキング路沿いの 除草程度で、ほとんど手つかずの状態で遷移してきています。 ★この概況を元に、合計18区画を、以下の様に分類して分析を行っています。 ・「S1〜S3」と「N1〜N6」の区画 ⇒ 便宜上、「西区」としています ・「S4〜S6」の区画 ⇒ 便宜上、「コナラ区」としてい ます ・「S7〜S9」と「N7〜N9]区画 ⇒ 便宜上、「東区」としています 3.調査結果の分析 ★「表2 3区域別の樹木数量比較」を元に @ほとんど手つかずの西区では、他の区画と異なり、樹木の絶対数が多いと共に、 亜高木・高木が主体で、低木樹木と層を成しています。特にケヤキ、クマノミズキ が多くを占めています。 Aコナラ区は、コナラの実生保護のために周辺の実生を除いていますので、ケヤキや クマノミズキ・エノキもありますが、西区よりは少ない比率になっています。 B東区は、総体として本数が少なくなっています。 ★「表3 西区の遷移率比較」を元に、 前回調査からどのくらい減少したかがわかるように、遷移率を出してみました。 対象は、西区と全体との比較ですが、ある意味、手つかずの遷移を表していると 思われます。 @遷移率ですので100%以下が一般ですが、100%以上のものは、前回には 小さすぎて調査漏れがあったか、周辺に母樹があるので前回調査後に新たに実生 が生育したかということだと思います。 カエデ、カゴノキ、マンリョウ、オニシバリなどが高い遷移率なので、調査後に 発芽・生育しているものと思われます。 A西区では、合計での遷移率が57.8%ですので、今回で最も本数の多かった ケヤキの遷移率は、低めに出ています。 実生が多く育ったが競争によって負けるのも多いということかと思います。 B反対に、クマノミズキは95.1%で非常に高めに出ています。 この点から、本数の多少ではなく、遷移から見るとクマノミズキが競争に強いと 思われます。 ★「表4 3区域別の樹高別本数一覧」を元に、 さらに詳細にみるには「表5 3区域別の区割り別・樹高別本数」を参照して @東区は、全体的に本数は少ないですが、3m以上のものが8本ある以外は樹高の 低いものばかりとなっています。 クマノミズキが「S−7」と「S−8」に各1本、「N−7」に3本あり、 ムラサキシキブが「S−8」と「S−9」に各1本、 アカメガシワが「N−7」に1本あります。 これらの内、コナラ区に近い「S−7」「N−7」にあるクマノミズキとアカメ ガシワはコナラへの影響に配慮が必要かと思われます。 Aコナラ区では、唯一コナラが17本保護されていますが、いずれも150cm以 下のもので 50cm以下は、 8本 50cm〜1mは、 6本 1m〜1.5mは、 3本となっています。 周辺には、2m以上のクマノミズキが18本で、高いものでは、5m以上が2本 その他2m以上のものは、ケヤキ2本、エノキ3本があります。 コナラと同じくらいの樹高になっている高木・亜高木の樹種も多いので、今後の 生育に配慮が必要と思われます。 B西区では、比較的樹種数も多く、高木から低木を含め層ができているので、今後 も遷移を見守っていくエリアと言えるでしょう。 ただし、自然の遷移に任せると、表−3の分析でもわかるように高木の「クマノ ミズキ」の一人勝ちが想定されます。 樹高2m以上では、高木の中では、ほとんどが「クマノミズキ」の占有状態です ので、どの高木を残すかを考える際には、樹高2mが一つの判断基準となるかと 思います。例えば、2.5m以上のクマノミズキは除伐対象にするとか‥‥。 C自然遷移も大切ですが、高麗山公園は風致公園ですので、「自然の遷移を学習で きる区」と、「多様性をが保ちつつ遷移を促す区」とに分けて考えても良いかと 思われます。 ただし、コナラ区に近い「N−3からN−6」と「S−3」については、高木の 樹種の生育がコナラへの影響が出ないように留意が必要と思われ、今後も樹高の 管理を進めていく必要がある区割りと言えるのではないでしょうか? 西区全体でコナラより高い2m以上の樹種では クマノミズキ 99本 ケヤキ 9本 イヌシデ 5本 ムクノキ 3本 カラスザンショウ 3本 アカメガシワ 3本 ムラサキシキブ 2本 エノキ 1本 ありますが、表3で遷移率が高いのはクマノミズキのみなので、特に注意が必要と 思われます。 特に、3m以上のクマノミズキは、コナラ周辺の区でみると 「S−3」で 8本 「N−3」で 5本 「N−4」で 6本 「N−5」で 13本 「N−6」で 3本 あります。 どちらかと言えば、「N−3からN−6」と「S−3」は自然の遷移に任せきらず 「多様性をが保ちつつ遷移を促す区」として考えても良いかと思われます。 ★表5−1ー東区の区割り別・樹高別本数 表5−2ーコナラ区の区割り別・樹高別本数 表5−3ー西区の区割り別・樹高別本数数 を元に ここでは、区割り別に樹高別に詳しく見ることができます。 留意が必要なのは、 @表4でもコメントしていますが、樹高2m以上ではほとんどが「クマノミズキ」 が占有している状態です。 A北側区画で常緑樹の中高木が残っているのは、「N−1」以外以下の状態です ので、どう残していくかがカギとなります。 N−1 50cm以下と2m以下のタブノキのみ N−2 いずれも50cm以下のタブノキ、ヤブニッケイ N−3 50cm以下のタブノキのみ N−4 50cm以下のタブノキのみ N−5 50cm以下のタブノキのみ N−6 50cm以下のタブノキのみ N−7からN−9には存在しません。 B常緑樹の高木では、カゴノキが、南側区画の「S−3」、「S−6」、そして 「S−9」のみに生育しています。 |
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